はじめに
こんばんは。金田です。
探偵学では、事件の捜査に関する知識を全て網羅する。その中でも事件の解決に最も関わりのある殺人方法については最初に議論すべきである。殺人の中でも毒殺は特殊だが、その毒について何も知らないと手も足も出ない。本稿ではもっともよく知られる青酸カリについて扱う。まずは毒物の構造や性質、遺体の特徴について紹介する。
青酸カリとは?
青酸カリとは、青酸カリウムやシアン化カリウム、シアンと呼ばれるものである。青酸カリは図1の構造をしていて、ナトリウムイオン(Na+)とシアン化物イオン(NaCN-)のイオン結合したものであるとわかる。
図1. 青酸カリの構造
この青酸カリの有毒な部分はシアン化物イオンである。よって、必ずしもナトリウムイオンと結合する必要はない。実際に、シアン化カルシウムなども存在する。以下の表1に青酸カリの性質を示す。
表1. 青酸カリの性質
致死量 | 200mg |
摂取方法 | 経口摂取又は皮膚 |
症状 | 意識障害、昏睡、痙攣 |
遺体の特徴 | 鮮紅色の死斑、漿膜に出血班 |
解毒剤 | 亜硝酸アミル、チオ硫酸ナトリウム |
以上のことから、青酸カリは非常に有毒であり、わずかな量でも致命的な影響を引き起こす可能性があることがわかる。摂取や吸入、皮膚への接触など、様々な経路で人体に侵入すると危険である。意識障害、昏睡、痙攣などの症状が現れ、急速に死に至ることがある。青酸カリ中毒の症状は急速に現れることがあり、瞬時に死に至ることもある。また、青酸カリ中毒は青酸カリ自体を飲み込んだことによる中毒症状ではなく、胃酸と反応して出てきたシアン化水素を吸い込むことによって中毒となる。
青酸カリ中毒の死因鑑定
死因鑑定では、体内の青酸カリ濃度や組織のシアン化物の存在を調べることが行われる。また、被害者の状況証拠や医学的な検査結果も考慮される。体内の青酸カリ濃度を調べるためには、通常は血液や尿などの生体試料から検体を採取し、それらの中の青酸カリの濃度を測定する。しかし、青酸カリ中毒の中でも、死因の特定がしづらい場合がある。まずは急性中毒の場合である。青酸カリは非常に急速かつ強力な毒性を持っており、短時間で致命的な影響を引き起こすことがある。被害者が意識を失ったり、急死することがあるため、その場での目撃者がいない場合は、死因の特定が難しくなる。また、青酸カリの中毒症状は、他の物質による中毒や心臓発作などと似ていることがある。特に、一般的な中毒症状や心臓発作の症状が現れる場合、死因を特定するのが難しくなる。
青酸カリ中毒の遺体の特徴
青酸カリ中毒で亡くなった人の遺体は、鮮紅色の死斑、漿膜に出血班等の症状が現れることがある。また、青酸カリは特有の苦味と青酸臭を持っている。したがって、被害者の口から強い青酸臭が検出されることがある。この臭いは、遺体の近くで感知されることがある。青酸臭は若いピーナッツや杏仁豆腐の臭いとも言われる。甘酸っぱい臭いだという。これらの特徴を見れば、死因が何の薬物であったかを判定することができる。
青酸カリの液性
青酸カリはシアン化物イオンをもつが、そのシアン化物イオンは三重結合で炭素と窒素が結合するため、水溶液中のH+を奪う。よってOH-がその分出てくるため、強塩基性を示す。よって、皮膚のタンパク質を侵し、皮膚を損傷させる。それには強い痛みがあるため、もし青酸カリを飲ませようと思っても、吐き出されて終わりだろう。
おわりに
以下に今回の知識を使って推理する事件を用意した。前編を読めば推理できるため、是非ともチャレンジして欲しい。