シーザー暗号とは
シーザー暗号は、古代ローマのユリウス・シーザーが使用したことで有名な暗号技術だ。紀元前1世紀、シーザーは軍事通信を秘密に保つためにこの暗号を活用していた。アルファベットの各文字を一定の文字数だけシフトさせる単純な方法で、敵にメッセージの内容を知られないようにする目的で使用された。シーザー暗号は、そのシンプルさと歴史的な背景から、暗号学の入門として広く知られている。
シーザー暗号の仕組み
シーザー暗号は、アルファベットの各文字を固定のシフト数だけずらすことで暗号化する。例えば、シフト数が3の場合、AはDに、BはEに変換される。このシフトは全ての文字に対して一律に適用されるため、元のメッセージは単純にずらされた文字列となる。シーザー暗号の数式的表現は以下の通りだ:
暗号化: E(x)=(x+n)mod 26E(x)=(x+n)mod26
解読: D(x)=(x-n+26)mod 26D(x)=(x-n+26)mod26
ここで、Eは暗号化関数、Dは解読関数 Xは文字の位置、nはシフト数である。この仕組みは非常に単純であるが、当時としては十分なセキュリティを提供していた。
シーザー暗号の見抜き方
シーザー暗号であることを見抜くには、いくつかの特徴に注目する必要がある。まず、暗号文がアルファベットのシフトによって生成されているため、文字のパターンが一定の規則性を持っている点に注目する。
特徴的なパターンの存在
暗号文において、文字の出現頻度が一様ではなく、特定の文字が他よりも多く出現する場合が多い。例えば、英語の文章ではEが最も頻繁に出現するため、暗号文中でも特定の文字が突出していることがある。
短い鍵長
シーザー暗号は単一のシフト数を使用するため、鍵長が非常に短い。アルファベットの全26文字のうち、全ての可能なシフト数を試すことが可能であり、シンプルなパターンが見つかる。
アルファベットのみを使用
シーザー暗号は通常、アルファベットのみを使用する。暗号文に数字や記号が含まれていない場合、その可能性が高くなる。
これらの特徴に注目することで、暗号文がシーザー暗号であるかどうかを見抜くことができる。
シーザー暗号の解読法
シーザー暗号の解読は比較的容易だ。以下の手法が一般的である。
頻度分析
暗号文中の各文字の出現頻度を分析し、最も頻繁に出現する文字を特定する。この文字をEと仮定してシフト数を推定する。例えば、暗号文中でGが最も頻繁に出現している場合、GがEに対応すると仮定し、シフト数は2と推定する。
総当たり攻撃
シフト数が26通りしかないため、全ての可能なシフト数を試すことができる。全てのシフトパターンを生成し、最も意味のある文章を見つけ出す。例えば、次のように全てのシフトを試す。
- シフト数0: THE QUICK BROWN FOX JUMPS OVER THE LAZY DOG
- シフト数1: SFD PTHBJ AOQVM ENW ITLOP NUWJ SFD KZMX CNE
- シフト数2: RCE OSGAI ZNPUL DMV HSKNO MTVI RCE JYLW BMD
このようにして、全てのシフト数を試し、正しい文章を見つけることができる。
練習問題
以下の暗号文をシーザー暗号で解読せよ。シフト数は不明だ。
暗号文: “GUR DHVPX OEBJA QBT WHZCRQ BIRE GUR YNML SBK.”
- まず、頻度分析を用いて最も頻繁に出現する文字を特定せよ。
- 特定した文字を元にシフト数を推定し、全ての文字を逆シフトして解読せよ。
- 総当たり攻撃を用いて、全てのシフトパターンを試し、正しい文章を見つけ出せ。
解答例
頻度分析を行うと、Gが最も頻繁に出現していることが分かる。GがEであると仮定すると、シフト数は2となる。シフト数2を逆にシフトすると、元のメッセージは “THE QUICK BROWN DOG JUMPED OVER THE LAZY FOX” である。